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株式会社ネットプライスドットコム 〜航空会社にあこがれた男が創った世界で唯一空を飛ばない「航空会社」〜
高橋宏尚氏 伊藤直氏
株式会社ショップエアライン 代表取締役社長
株式会社ネットプライスドットコム グループCEO室室長

1997年、大学卒業後、イマジニア株式会社にて米国法人・海外事業の立ち上げ参加。シリコンバレーにおけるゲーム業界での経験を経て、2000年に株式会社ネットプライス(現ネットプライスドットコム)に入社。営業部門、管理部門、株式上場プロジェクト等の各統括を担当後、2007年4月、米国eBayとの共同プロジェクトを行うグループ会社株式会社ショップエアライン代表取締役社長に就任。日本と海外をつなぐECサービス「セカイモン」を展開する。慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)卒。京都府出身。
Q:
ネットプライスに入社されたきっかけは何ですか。
伊藤:
現在グループ持株会社であるネットプライスドットコムの代表をしている佐藤輝英・代表取締役兼CEO(以下、佐藤)と高校・大学(慶應義塾応大学SFC)の同期だったことがきっかけです。大学では一緒にラグビーやっていました。大学を卒業した後、彼はソフトバンクに、私はイマジニアというゲーム会社に入ったのですが、サイバーエージェントが作った新事業であるネットプライスの代表に彼が就任したとき、召集がかかりまして。私はそのときカルフォルニア州のバークレーで仕事をしていたのですが、「一緒に事業をやろう、帰ってこい。」と言われてすぐに合流しました。8年前のことです。
Q:
まさにネットプライスの立ち上げに関わったわけですね。
伊藤:
そうですね。ネットプライスは、当時次世代のインターネットを使ったビジネスモデルを作ろうということで、eコマースに特化した会社として設立されました。私が参加した2000年の初めは、まさにこれからビジネスモデル創りから、集客・開発などを始めようとする時期でした。
Q:
もともと起業やベンチャー企業に関心があったのですか。
伊藤:
いいえ。私はもともと会社の経営や起業というよりかは、どちらかというと新しいモノやサービスなどの「仕組み」を創る方に興味がありました。私は帰国子女で、オランダのインターナショナルスクールにいたのですが、そのときの言語や国籍、文化や宗教の壁を超えた独特の空間での経験がその後の自分に大きな影響を与えたと思います。あの環境を自分でも創れないかなという思いを日本に帰ってきてからも常に持っていました。大学でもそういった勉強をしていましたし、卒業して海外のゲーム会社と日本向けのオンラインゲームを一緒に制作したりする仕事に就いたのもそうした理由でした。

ゲーム会社に入社して1年目、出張で生まれて初めてアメリカに行きました。たくさんの優秀なビジネスマンに出会い、環境も最高で、将来ここで仕事がしたいな!と思いました。起業したいというよりは、日米間でクロスボーダーの事業環境を創りたいという思いから、帰国後すぐ社長にアメリカでのビジネス展開を直訴してみたところ、予想に反してすぐにOKが出ました。アメリカ人の上司と、もう一人の先輩と3人で、現地での事業立ち上げが始まりました。
Q:
国際的な仕事という意味では、就職先として、商社やメーカーなどの大企業などもあったと思いますが。
伊藤:
はい。実際そういう進路も考えていました。就職活動中は航空会社を狙っていました。オランダにいたのでKLMオランダ航空とかヨーロッパの航空会社に憧れていたんですけど、中途採用しかなくて。
商社や銀行への就職も考えていましたが、いまいちピンとこなくて。どうしようかなと思っていたときに、偶然パンフレットで知ったベンチャー系のゲーム会社の説明会に行ってみたところ、説明会後にいきなりビールが出てきて(笑)。そこで直接社長やマネジメントの皆さんと話す機会があり、「人」に惚れてすぐ入社を決めました。会社が今何をやっているかだけではなく、この人たちと将来も一緒に面白いことがしたいと強く感じたのを覚えています。
Q:
伊藤さんがネットプライスに入った当初のビジネスプランについて教えてください。
伊藤:
ネットプライスに入社した直後は、具体的なビジネスのアイデアはまだ固まっていませんでした。インターネット上ならではのショッピングサービスが絶対面白い。そしてネットとテレビや雑誌等の他のメディアを組み合わせることでも、新しいショッピングの形が考えられるかもしれない。そして日本だけではなく、海外のネット・メディア等とのコネクションも創れればもっと面白いかもしれない等と、まずはいろいろやってみようといった状態でした。ただ、どうせ会社を創るんだったら、将来、ネットプライスを世界地図に載るような、世界から注目される会社にしたいねという話はしていました。そのためのステップとして会社を上場させよう。そして海外に出て行こう、と話をしていました。そうして2004年には設立4期目で東証マザーズに株式上場し、2007年にはeBayとの提携を通じて海外への第1歩を踏み出すことになりました。

佐藤も私も、1993年、大学1年生のときに初めてインターネットに触れました。日本のホームページといえば、まだ「Welcome Japan」みたいな、国旗とかが書いてあるサイトぐらいしかなかった時代です。でもその頃、NASAやアメリカの大学等、海外にある情報が生でリアルタイムに触れられることに、二人とも大きな衝撃を受けました。そのとき感じた、「海外と繋がっているインターネットの魅力」。これをベースにしたビジネスがしたい、ネットプライスでもそういうビジネスがしたいと。そうした考えが入社直後のざっくりとしたビジョンでしたね。
Q:
ネットプライスがeBayと提携して始められた海外オークションサイト、セカイモン(sekaimon)について教えてください。まず、名前の由来は何ですか。
伊藤:
ネーミングの由来はシンプルで、「世界で買い物」をするという意味を持たせています。また、実は、四次元ポケットからどんどん物が出てくる「ドラえもん」のイメージもかけています。あ、世界へのゲートウェイという意味での門(もん)という意味にもとれますね。正式名称は「sekaimon」ですが、日本発で、且つ世界にも通じるサービスにしたいという思いから、和風の名前をアルファベットにしました。

セカイモンは2007年12月4日にスタートし、Yahoo! Japan、eBayと一緒に3社で共同発表したのですが、マスコミでの露出の多さもあって、オープンと同時にアクセスが集中し、サーバーがぶっ飛んじゃいました。うれしい悲鳴ではあったのですが、現場では本物の悲鳴でした。お客様には申し訳なかったのですが、1週間、一度サイトを閉じて、集中メンテナンスを行いました。ほぼ徹夜で社内のあらゆるサーバーをかき集めて、システムの増強、チューニングを行い、再開しました。その後も本格的なプロモーションはまだ始めていないにも関わらず、おかげさまでお客様同士の口コミでトラフィックも勢いよく伸び続けています。

今回のプロジェクトは、サンノゼをはじめ、世界中にあるeBayの技術やカスタマーサポートチームと連携して進めています。そこで、アメリカの拠点として作ったのが、ジェトロBICさんの御世話にもなっている「ショップエアライン・アメリカ」です。
Q:
ショップエアラインという会社名は航空会社にあこがれていた伊藤さんがつけた名前なのですか。
伊藤:
はい、そうです。これだ!と思って、こればかりは独断で決めました(笑)。世界で唯一、空を飛ばない航空会社です。インターネットのビジネスといっても、セカイモンのようなeコマースの領域になると、情報のやり取りだけではなく実際にモノも動かさなくてはなりません。世界中の商品が我々のネットワークを通じて手に入る仕組み、エアラインのような安全でしっかりしたチャネルを構築していきたいという思いからこの名前にしました。
Q:
日米間での物流はどのように処理されているのですか。
伊藤:
セカイモンで落札された北米地域からの商品は、一度、ロスの物流拠点で、全て箱を開けて検品した後、日本に空輸されます。お客様には配達までにだいたい2週間くらいかかるとお伝えしています。
Q:
アメリカの事業で苦労した点があれば教えてください。
伊藤:
事業の立ち上げという意味では、苦労は日本でもアメリカでも同じだったと思います。ただ、為替に関しては、今まで経験がなかったので大変でした。オペレーション上のタイムラグが増えれば増えるほど、為替リスクが発生したり。またオペレーションとは別のところで、会計処理上での予想外な為替差損や利益が出てしまったりと。勉強不足で、実際に事業を始めてから学ぶところは本当たくさんありますね。
Q:
リクルーティングについて日米で違いはありますか。
伊藤:
シリコンバレーではうまく事業の生態系ができていて、成長のステージ別に役割分担ができていますよね。アーリーステージが好きで何度も起業を繰り返しているような人もたくさんいますし。優秀な技術者の方も、世界中から集まってきていますし、人材の面でとても魅力的な場所だと思います。

一方で東京にそういう環境があるかは疑問ですね。ただ、日本でも優秀で熱い意欲を持った大学生や新卒の方々が増えてきていると思います。そんな皆さんと一緒に日本の未来を創って行きたいという思いから、最近ネットプライスグループでは、ビジネスオーディション形式の採用活動も積極的に行っています。グループ内の20代、30代のCEOメンバーが、それぞれの事業の魅力を学生と語り合い、同時に学生が考えたビジネスプランを聞かせてもらいます。オーディションで採用されたプランには当社が出資し、その事業プランと学生を一緒にバックアップしながら育てるという試みです。2011年までには合計30人の事業家つまりCEOをグループ内に育てたいと考えています。熱い起業家精神を持った学生たちに、シリコンバレーのような生態系のモデルを提供し、次世代の事業を育てるエンジェル的な機能や仕組みを世界中で創っていきたいと考えています。
Q:
具体的にはどのような仕組みを考えていらっしゃるのですか。
伊藤:
グループとして市場からお預かりした資金と、グループ内の先行事業で生み出す利益を、次の事業家と事業の育成に継続的にまわしていくというようなインキュベーションの仕組みです。新規投資を行う際には、各社内の新規プロジェクトとしてだけではなく、ビジネスオーナーであるCEOを新たに立てて、事業を人「財」を一緒に育成して行きたいと考えています。そうした仕組みの中で、グループの中から新たに株式公開をする企業が出てきてもいいのかなと思っています。

当社グループでは月に2回、全員のCEOが集まってビジネストークする場があります。みんなCEOという立場で24時間常にビジネスアイデアを考えていますが、それをぶつけ合うのです。これがまた厳しく、かつ楽しい。このCEO会議がいまの9人の3倍の規模、30人になったらもっと面白いかなと(笑)。経営にもエンターテイメントは必要ですよね。みんなお互いライバルですが、同時にファミリーとして悩み相談も含め、ぶっちゃけトークができますし、それぞれの強みを持った、且つ決定権のある人たちなので話も早い。それぞれが新しいことにチャレンジして、シナジーを出して成長すれば、結果グループとしての成長に繋がります。そういう環境が作れたら楽しいですよね。
Q:
ジェトロによる支援で良かった点はありますか。
伊藤:
弁護士、会計士の先生方をジェトロさんからご紹介いただいたり、またジェトロさん主催のイベントをネットワーキングに活用できたりと、すごくありがたいです。以前バークレーで会社を設立したときは、アメリカ国内での信用も実績もない中、ゼロから自分たちで探した経験があるので、こうしたサービスのありがたさがよく分かります。オフィスをどこにするかとか、どの先生が信用できるのかなど、会社設立時のこういった悩みは本当に時間がかかるものです。今回ジェトロさんのおかげで、その部分はあまり気にせずビジネスの方だけに集中できました。今お世話になっている会計士・税理士・弁護士の先生方は、日本の親会社との国際連結も含め、日米両方の事情に詳しいので気さくにアドバイスいただけて、本当助かっています。
Q:
アメリカに進出しようと考えている日本の起業家の方々へのメッセージをお願いします。
伊藤:
海外での起業はとてつもなく大変なイメージがありますが、それは日本でも同じ。やってみないと分からないと思います。日本にいてもリスクはあると思いますし、日本だから成功する確証ってないと思います。ただ、ちゃんとした強みがあれば、海外「だから」成功するケースもあると思うんですよね。グループ内でよく話をするのは「チャンスは貯金できない。」ということ。ジェトロさんもいろいろサポートしてくれますし(笑)、まずは一度本気で試してみることだと思います。
(編集:森喜彦)

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